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風速67.7mの恐怖

スチールの看板が木の葉のように舞いとんでいる。コンビニの前のゴミ箱はゴロゴロ転がり、民家の瓦は容赦なく地面にたたきつけられる。信じられないような光景を目の当たりにして車中の私は考えなしに出かけてしまったことを心の底から後悔していた。
風速67.7m。観測史上最大といわれる風速を記録した10月9日の静岡県石廊崎。
まさにその日その場所に、何をとちくるったか我が家ご一行様は車で出かけてしまったのであった。

台風が関東に上陸する恐れがある、とにかく外出はしないように、というニュースを聞きながら、「台風が来る前になんとか南伊豆の実家にたどり着けるだろう」となんの根拠もなく車で出発したノーテンキな夫と私。
道中の天候は思いのほか快適で「これが嵐の前の静けさっていうやつかな?」なんて余裕をかましていた。
東名高速を三島インターで降りた頃には天城街道が通行止めになっているとカーナビがアラートを出していたが夫はどこ吹く風とばかりに「平気だよ」と予定通りのルートで走る。
問題は天城峠を越したあたりからだった。
急速に降り出した雨に少しヤバイな、と感じながらもこのまま急いでゆけばなんとかなるだろう、私たちの予見はまだまだ甘かった。本来ならここですぐ一時退避ができるような場所を探すべきだったのだ。
私たちがのん気に河津から海沿いの道に出た頃にはあまりの風の強さに車はまともに走ることができなくなっていた。

怖い・・。
生まれて初めて台風がこんなに怖いと知った。海は猛烈に時化て真っ黒ににごり、吹き上げる風は目でその動きが確認できるほどの威力を誇っている。
突風が吹くたびにドーンと大きな音がして車体がグラっとゆれる。
この車ひっくりかえされちゃうよ。
顔面蒼白になっている私に夫が「ビデオ回しとけよ」と指示する。
こんな緊急事態にさえそんな物言いができる夫に半ば感心しながら私はビデオカメラを取り出して台風の状況を録画しはじめた。
まともに走ればもう30分ほどで南伊豆にある夫の実家につける距離にいる私たち。
しかし少しでも動けば風にかれめとられそうで恐ろしくて前に進むことができない。
夫は少し躊躇したあと車をユーターンさせて山沿いの別ルートを走ることにきめた。
前後の車も同じように海沿いの道をあきらめはじめていた。

少し内陸に入って一安心かを思いきや、今度は無数の飛来物が車を襲う。
ガコッ、ドンッ。
何かがぶつかるたびに車にものすごい衝撃が走る。この頃には私は恐怖のあまりもうビデオを回すことさえできなくなっていた。
見るとサイドミラーは完全にフロント側に折れてしまっている。
余りの飛来物の多さに山沿いの道も断念、コンビニの駐車場で台風が通り過ぎるのを待つことにした。
ラジオをつけると「屋外にいる人はすぐ建物の中に入ってください」とのアナウンス。
入れるもんなら入りたいよー。
早鐘をうつ胸をおさえながらなんとかがんばれたのは台風なんてどこ吹く風とばかりに車中で熟睡する二人の息子がいたからだと思う。

小一時間ほどそうやって身をすくめている間に猛烈な台風はとおりすぎていった。
なんとか実家までたどり着いてみたもの一晩中の停電、親戚のうちは屋根をもっていかれたりと台風の爪あとは私の想像をはるかに超えていた。
夫の自慢の車も屋根がボコボコに凹んでいて、「歩いていてこんなのに当たったら死んでるよ・・・」とぞっとしないではいられなかった。
翌々日南伊豆の実家から東京へ戻る道すがらにも土砂崩れや落石、浸水の被害が各所に見られ、台風のど真ん中を無傷で通りぬけた自分たちがどれほど幸運だったかを改めて思い知らされた。

さて、東京の自宅にもどって一休みしていると3才の長男が自分のミニカーで遊びはじめた。
「うわーたいふーで車がふきとばされました!」
「ガソリンスタンドの屋根も落ちました!」
「駐車場の陰に隠れていましょう!」
寝ているとばかり思っていたけれど、実はよく見ていたらしい。
ニコニコしながら台風突破旅行の再現をしている息子を見て、車の修理代は痛いけれど、息子たちに何事もなかったんだからヨシとしよう。
バカな自分たちの行動に反省しながらも少し心が安らいだ。

Posted by jizou at 2004年10月11日 23:36 | Comments (3) | TrackBack(0) | 節約ランキング | このエントリーを含むはてなブックマーク


コメント (3)

おかえりなさい。無事で何よりです。
私もまだ台風の恐怖には直撃したことがないです。
なので、台風という言葉を聞いてもそれほど防備はしていなくって、日常の生活をおくっています。
地震は阪神大震災の記憶が残っているので、震度1の地震がきてもビビってます。
こういう経験は避けてとおりたいものなのですが、経験するからこそ日常の幸せだとか、小さなことにも感謝できる気持ちが持てると思います。
ジゾウさんとご家族が無事で本当に良かったです(^^

こんにちは♪
台風、本当に大変でしたね!!
読んでいて充分怖さが伝わってきました。
経験した事がない位の状況だと
次に何が起こるのかわからないので
すごく怖いですよね。
でも、ご無事でよかったです。

私の住んでいる千葉県も初めて体験する
暴風雨でした。家の中で息子と2人。
窓のすぐ外の電柱が倒れてきたら
どうしよう!?と悩むくらいビビってました。

息子さん、無邪気で可愛いですね♪
思わず私も微笑んでしまいました(^-^ )

ジゾウ:

いやー、みなさん、冗談じゃなくてね、本当に死ぬかと思いましたよ。
あんなに怖い思いをしたのは初めてでした。
自然の力の前で人間がどんなに小さく無力な生き物かを感じましたねぇ・・(ってそんなときに出歩く私がバカすぎるんですけど)
るぅさんは神戸ですもんね、阪神大震災の記憶が薄らぐことはないですよね。
備えは本当に重要です。
まりこさんのところも無事でなにより。息子さんと二人という状況を想像しただけで私も怖くなります。何事もなくてヨカッタよ。

ちなみに我が家の車の修理代は10万円だそうです。
台風の傷は深い・・。(;;

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