350日の節約生活

 
HOME » 8)節約無駄話 » 吉原手引草

吉原手引草

第137回直木賞受賞作品吉原手引草
直木賞だの芥川賞だのというだけで食指が動いてしまうのは正常な好奇心だと私は思っている。今回も惜しむことなく1,680円を支払って楽天ブックスで購入した。

舞台はタイトルのとおり江戸は吉原。そこである花形花魁の消息を「誰かが」聞いて回っている。小説はその「誰か」に答える形で、関係者が一人称で自分の知るその花魁の姿を語っていくという形で展開される。
不思議なことにこの小説の主人公である花魁は作中には一度も登場せず、その姿は誰かの口伝として表現されるばかりだ。
もどかしいことに我々は徹頭徹尾、主人公の花魁に触れ合うことは許されず、その花魁の姿を想像することしかできない。
しかしそのもどかしさこそがこの小説のミソであり、さまざまな人に花魁の姿を聞いて回る「誰か」と自分がいつしかシンクロしてゆく。あたかも自分がその花魁を探し、事件の真相を知りたがっているもう一人の主人公になるのだ。

話のストーリーは驚くような展開をみせないものの、廓の絢爛でありながらどこかしら薄暗い世界をうまく話にのせて読者の興味をそそっている。とはいえ花柳界についての知識が全くないとなるとどこまで想像力を働かせてこの小説を読めるかやや不安な面もある。
またもう一つ残念だったのが小説の帯にストーリーの大筋が(キャッチフレーズ並みの大筋だけど)刷られていること。
親切な文言ではあるのだけれど、はっきりいって蛇足。
この小説は「誰か」が何を探っているのかを知らないで読み進めながら全体の絵を探す方がきっと面白く読めるはずだ。

前半部はややゆるすぎる展開かなとも感じたが、後半になるにしたがってどんどんと話が面白くなりスピードが出てくる。結びは少し野暮ったいものの、ストーリーの長さを感じさせない文章の仕立てはさすが。

これは美しく、そして痛快な物語だ。

Posted by jizou at 2007年9月14日 17:40 | Comments (1) | TrackBack(0) | 節約ランキング | このエントリーを含むはてなブックマーク


コメント (1)

ayan:

時代小説はほとんど読んだことのない私ですが、ジゾウさんの文章を読んでいると非常にそそられます。
(こないだの『憑神』も気になっていますー。)


> 小説はその「誰か」に答える形で、関係者が一人称で自分の知るその花魁の姿を語っていくという形で展開される。

なんか『藪の中』みたいな話ですね。

コメントを投稿

 
当サイトは、Yahoo! Japanの【倹約・節約】および【レシピ】、All About Japanの【節約・やりくり】に登録されています。
・・・
当サイト内の文章、デザイン、画像の無断転載、複製はおやめください。
また各サービスなどの利用、入会等のアクションは個人の責任において行って下さい。
質問、広告掲載のお問い合わせなどはnomail1.gifまでお願いします。