マグマ大使の笛
私はバーゲンで洋服を買わない。
昔はそれこそバーゲン狂で、バーゲンと聞けば「行かなきゃ損!」とばかりに東奔西走していたものだが、あまりものを持たなくなってからはバーゲン会場へ赴くこともなくなっていた。
何しろあの「80%OFF]とかとかかれたタグには魔力があるのだ。さして必要のないものでも「なんか得じゃん?」と思って買ってしまう。そして結局たんすの肥やしに・・なんてこと一度や二度ではない。もういい加減懲りようじゃないか、そう思う32歳専業主婦の私。
ところが先日夫がアパレルメーカーのファミリーセールの招待状を持ってきた。
60%オフ、会場は品川。
普段なら子連れではちと無理、と考えるところだが、今回はなぜか行ってみる気になってしまった。
なにしろずいぶんと品川には行っていないし、品川駅前もずいぶんかわっているはずだ。気分転換に探索するのも悪くはないだろう。
下の子は実母にまかせ、2才の息子を連れて出かけることに。
ゴソゴソと出かける用意をしていると、おばぁちゃん(実母)が息子に向かって切々と説いている。
「いい?もしママとはぐれたらこの笛を吹くのよ?わかった?」
見ると息子の首からは幼児雑誌の付録のおもちゃの笛がぶらさがっていた。
「ほら、吹いてみなさい。そうそう、思いっきりふくのよ。」
言われたとおりに息子が笛を吹くとポーポーと世にも間抜けな音がした。
オイオイ、かーちゃんはマグマ大使ではないぞ。
バスと電車をのりついで現地に着くと・・・会場は予想以上の大混雑だった。
会場の外には親に見捨てられた子供の群れ。きっと親に「ここで待っているのよ!」といい含められているのだろう、お菓子をボリボリやりなが地べたに座っている。
まるでジプシーだよ、いいのか?日本、こんなで。
息子に絶対にかーちゃんのそばを離れるではないぞ、と言い聞かせて手を握っていざ会場へ。
素敵な洋服は沢山あるものの、何しろ片手を子供にとられているし、陳列棚に群がる人の数が多すぎて洋服をチェックすることさえままならない。
疲れちゃったなー、かえるかなーなんて思い始めた頃子供がぐずりはじめた。そして突然あらぬ方向へ走り出す恐るべき2歳児。
何しろ身長が90cm程度なのだからこの人ごみではすぐに見えなくなってしまう。陳列棚の高さがすでに彼の身長以上なのだから一度見失うとそう簡単には見つけられない。
あわてて追いかけてみるがものの数秒で息子を見失ってしまった。
しばらく探すが見つからない。万が一外にでも出てしまったらそれこそ大事だ・・・見失って2分とたたないうちに私は半分パニックになってしまった。
あたりかまわず大声で息子の名を呼ぶ。見つからない。
ダメだ、スタッフにアナウンスをながしてもらって付近のスタッフに保護してもらおう、そう決めたときに・・・
ポー、ポー。
世にも間抜けな笛の音が聞こえた。
弱々しい音のするほうにあわてて駆けつけてみると、人ごみの中、豆のような小僧が首からぶら下げたおもちゃの笛を指の関節が白くなるほどぎゅっと握り締めてたっていた。
息子よ・・・賢いぞ、よく覚えていたね。
マグマ大使よろしく登場することのできたかーちゃん、息子との涙の再会のなかで実母に心から感謝したことは言うまでもない。
ネコに鈴、子供に笛。出かけるときは忘れずに。
Posted by jizou at 2004年08月04日 23:34
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