見知らぬおじさんと私
いつもの歯科医の待合室でソファーに座りブラックジャックによろしくを読みながら診察を待っていたときのことだ。
頭頂部にヒリヒリするような視線を感じて頭をあげると70歳前後の恰幅のよいおじさんが私を見下ろしていた。
つるりと禿げ上がった頭はテカテカとよく光り常に笑っているような表情がなかなか好感がもてる人だ。
漫画本をひざの上に開いたままおじさんを見上げる私。かたやニコニコテカテカしながら私をじっと見下ろすおじさん。
微妙な間合いで見詰め合いながらも、おじさんはどうやら待合室が満杯で自分の座る席がないことを無言でアピールしているこしているようだった。
漫画に夢中で気が付かなかったがこれはスマヌことをした。私のような若人が踏ん反りかえって待合室のソファーを独占しているのは確かにゆるされることではない。
席を譲ろうとそそくさと立ち上がったところ突然目の前のおじさんが私の両肩をガシっとつかんだ。
なんですの?と思っているとそのまま力づくでブスブスとまたもといたソファーに座らされた。
「いや、座ってくださいよ、私がたってますから。」
おじさんに肩をつかまれたままバタバタともがきながらも席を譲ろうとする私はそれこそ漫画みたいだったに違いない。しかも右手には読みかけのブラックジャックによろしくの1巻、左手にはスタンバイ中の2巻が握られている。結構変人チックだ。
おじさんは私をさらにじっと見ると
「いや、あんた細いからつめればワシも座れるやろう。」とのたまわった。
その言葉を聞いた私の隣に座っていた女性、これでもかというくらい壁際まで体を寄せて小さくなる。
しかし残念ながらおじさんの座るスペースはそれでもできない。
私はもうすぐ診察なのでどうぞお座りください、と言うとおじさんはそれならワシがすわろうか、とにこやかに私のゆずった席についた。
そして大きな声でひとこと。
「今どき珍しい親切な人やなー。」
・・・おじさん、私が親切というよりはそれ半分強制ですから・・。( ̄ー ̄;
敬老精神豊かな私はお年寄りには必ず席をゆずるようにしている。
しかし時には席をゆずっても迷惑そうにされていやな雰囲気が漂うこともある。
それにくらべればこのおじさんの少々の強引さなどご愛嬌だ。
でもただひとつ心残りだったのはこのおじさんとのドタバタ劇に気をとられて結局ブラックジャックによろしくの2巻が読めなかったこと・・・。
ああ、次回の診察が待ち遠しい。
Posted by jizou at 2006年03月23日 08:50
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